(前回記事の続き)
JR西日本の特急「やくも」に残る国鉄特急形電車381系は、新型車両への置き換えにより、2024年(令和6年)6月15日(土)のラストランをもって定期運行を終了。(定期運行終了後は、臨時列車用として当面僅かに残るのみ)
これをもって、国鉄時代の伝統のフォルムを残した最後の国鉄特急形電車は、定期列車としてはJR線上から全て消え、一時代が終わることになる。
岡山駅2番線に入線する381系特急「やくも」
朝一番の特急「やくも」は、車庫(下関総合車両所岡山電車支所)から回送でやって来る。
国鉄車両同士が並ぶ光景。どちらも引退が決まっており、このような光景も間もなく過去のものに。
下り先頭車はグリーン車(クロ381-144)。普通車からの改造車
日本国有鉄道(国鉄)が開発・設計した直流特急形電車381系
1973年(昭和48年) から1982年(昭和57年)にかけて製造。カーブが連続する線区でもあまり減速せずに走行できるよう日本初の車体傾斜式(自然振子式)を採用。車体は、鋼鉄製ではなくアルミニウム合金製。
この緑色を基本とした塗色の通称「緑やくも」は、1997年(平成9年)〜2011年(平成23年)まで定期列車として運行されていたもの。2023年(令和5年)にこの塗色が復刻されたが、2024年(令和6年)6月14日(金)運行終了予定。
岡山から山陰へ
午前7時05分、岡山(おかやま)駅発車
JR山陽本線を西へ向かう。
先頭車1号車はグリーン車
1列✕2列のゆったりしたグリーン車座席
一番前は乗務員室(運転台)への扉
381系の特徴である二重窓。2枚のガラスの間の空間は、かつてベネチアンブラインドがあった名残り。現在はベネチアンブラインドは撤去され、横引きカーテンに変わったため、二枚の窓の間の空間はデッドスペースと化している。
7時16分、倉敷(くらしき)駅停車
7時40分、備中高梁(びっちゅうたかはし)駅停車
一足早く新型車両273系に置き換えられた特急「やくも4号」岡山行きとすれ違い。
方谷(ほうこく)駅に運転停車。115系普通列車とすれ違い。
間もなく新見駅。キハ120形気動車が留置。
JR姫新線(姫路〜新見)の線路が右後ろから合流
中国山地を走る姫新線の末端区間は運転本数が少なく、平日・土曜は8往復、休日は7往復しかない。
8時10分〜8時11分、新見(にいみ)駅停車
新見駅は、伯備線の全列車のほか、姫新線、芸備線の気動車が発着する中国山地の拠点駅
新見駅を過ぎ、中国山地の山間部が続く。
秘境駅として名高い布原(ぬのはら)駅を通過
布原駅は伯備線の駅でありながら、芸備線の気動車しか停車しない。
布原駅に停車する列車は、下り5本(土休日4本)、上り6本(土休日5本)のみ。
深い山路を行く。
高梁川上流
備中神代(びっちゅうこうじろ)駅を通過すると、JR芸備線が左へ分岐
備中神代駅はJR芸備線(備中神代〜三次〜広島159.1km、全線非電化単線)の起点駅だが、運行系統上は事実上の末端区間で利用客は極めて少ない。JR西日本トップクラスの閑散線区である芸備線の備中神代〜備後庄原68.5kmは廃止も視野に入れた関係者間協議を開始。
西川を渡る。向こうは備後落合方面に向かう芸備線の橋梁。
事実上の芸備線末端区間の列車は、下り5本(土休日4本)、上り6本(土休日5本)のみ。
存廃に揺れる芸備線が中国山地に分け入っていく。
新型273系特急「やくも6号」岡山行きとすれ違い。
特急「やくも」は、2024年(令和6年)6月16日(日)から全定期列車が新型の273系に統一される。
新型車両273系「やくも」のデザインを担当したのは、えちごトキめき鉄道の豪華リゾート列車「雪月花」や、JR西日本「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」などを手掛けた、デザイナーの川西康之氏。
381系車内デッキ
やがて列車は県境を超え、岡山県から鳥取県へ。
8時44分、生山(しょうやま)駅停車
県境の分水嶺を超え、車窓には日本海に注ぐ日野川
根雨(ねう)駅に運転停車
国鉄特急色381系の特急「やくも8号」岡山行きとすれ違い。
国鉄特急色リバイバル編成は、全列車新型車両置換えより一日早く、2024年(令和6年)6月14日(金)がラストラン
古い木造駅舎が残る。
やがて車窓右側に名峰・大山(だいせん)が見えてくる。
列車は中国山地の山間部を抜け、山陰地方へ。
大山(だいせん)は、標高1729mの中国地方最高峰の日本百名山。その山容から「伯耆富士」とも呼ばれる。
JR山陰本線に入り、伯耆大山(ほうきだいせん)駅を通過
伯耆大山駅には貨物駅も併設。構内では貨物の入換作業が行われる。
伯耆大山駅構内北側の貨物留置線から、駅北西にある王子製紙米子工場へ専用線が延びる。
伯耆大山駅と岡山貨物ターミナルを結ぶ伯備線の貨物列車を牽引するEF64型電気機関車。JR貨物愛知機関区所属。
国鉄時代に製造されたEF64型電気機関車。国鉄色を堅持する。
JR貨物は国鉄由来の機関車は今後原則全般検査しないことを表明しており、検査切れの機関車から順次引退予定。JR貨物における国鉄時代の電気機関車終焉は近い。
9時21分〜9時23分、米子(よなご)駅停車
山陰地方の主要駅・米子
米子駅に隣接する車両基地「後藤総合車両所運用研修センター」
首都圏色のキハ47形気動車など、多数の車両が留置
JR境港線(米子〜境港)用のキハ40形気動車。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」作者の故・水木しげる氏の出身地が境港に因むラッピング車両。
米子の車両基地には、扇形機関車庫と転車台も残されている。
381系特急「やくも1号」グリーン車車内。米子駅では多くの乗客が下車。
ゆったりしたグリーン車座席
9時30分、安来(やすぎ)駅停車
どじょうすくい踊りで有名な「安来節」や、庭園が素晴らしい足立美術館がある安来。
中海と宍道湖を結ぶ大橋川に沿って走る。
9時50分、島根県の県庁所在地のある松江(まつえ)駅停車
松江の街。宍道湖の対岸は松江しんじ湖温泉街。
車窓右側に宍道湖を望む。
日本で7番目に大きい宍道湖(しんじこ)。汽水湖でシジミやシラウオなどが採れる。
宍道湖の対岸には、島根県唯一のローカル私鉄・一畑電車が走る。
9時56分、玉造温泉(たまつくりおんせん)駅停車
来待(きまち)駅運転停車
10時07分、宍道(しんじ)駅停車
宍道駅は、JR木次線(宍道〜備後落合81.9km)の起点駅
木次線には、観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」(出雲市・宍道〜備後落合、ディーゼル機関車+客車)が運転されていたが、車両老朽化に伴い、2023年(令和5年)11月23日(木・祝日)をもって運行終了。
2024年(令和6年)4月7日(日)から後継の木次線観光列車「あめつち」(米子〜出雲横田、気動車)が運行開始されたが、車両性能上の理由により出雲横田〜備後落合間は走らない。
2024年(令和6年)4月7日(日)から後継の木次線観光列車「あめつち」(米子〜出雲横田、気動車)が運行開始されたが、車両性能上の理由により出雲横田〜備後落合間は走らない。
木次線はJR西日本屈指の閑散路線。JR各社は近年赤字ローカル線の廃止論議を加速しているほか、最近は災害不通をきっかけにそのまま廃線にしてしまう事例が多く、木次線も廃止は予断を許さない。
木次線が左に分岐
水を張った田んぼ
普通車車内
出雲平野をラストスパート。終点の出雲市駅は近い。
斐伊川(ひいかわ)を渡る。